2011年5月に設置された「東京電力福島原子力発電所における
事故調査・検証委員会(委員長:畑村洋太郎・東京大学名誉教授・工学院大学教授)」が、このほど
中間報告を公表している。
同委員会は、東京電力福島第一・第二原子力発電所における事故の原因及び事故による被害の原因を究明するための調査・検証を行い、被害の拡大防止及び同種事故の再発防止等に関する政策提言を行うことを目的としている。
委員会では、現地視察、福島第一原発の立地自治体の首長や関係者のヒアリング(456
名)等を実施。中間報告では、「政府諸機関の対応」「原発における事故後の対応」
「被害拡大の防止対策」「事前の津波・シビアアクシデント対策」「同対策の不十分さの要因」「原子力安全規制機関の在り方」の6点から分析を行っている。
まず、現地対策本部では、その拠点となるべきオフサイトセンターが交通寸断で要員参集に支障があり、通信インフラの麻痺、停電、食糧・水・燃料の不足等のほか、放射性物質を遮断する空気浄化フィルターの不備など機能不全となったことを指摘する。
次に、現地対策本部への権限委任の不十分さ、官邸地下の危機管理センターと官邸5
階(首相執務室)の責任体制の分散やコミュニケーション不足により、情報収集が輻輳し、結果として情報共有が一元化されず、正確で最新の情報の入手や迅速かつ的確な意思決定に支障をきたしている。
また、事故後の対応では、1
号機の非常用復水器(IC)の機能不全やこれに気付かなかったことが、炉心冷却の遅れを生んだ大きな要因となったこと、3
号機代替注水に関する不手際なども指摘している。
被害の拡大防止対策では、迅速なモニタリングデータの公表の姿勢を欠いたこと、せっかくの緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)も原災本部及び保安院がその情報を広報するという発想を有せず、所管する文部科学省も、自ら又は原災本部等を介してSPEEDI
情報を広報するという発想がなかったことにより、住民避難の意思決定と現場の混乱を生んだと問題視している。
このほか、放射性物質がどのように放出・拡散するかや放射線被ばくによる健康被害の基本的な知識、原発事故の特異さに沿った避難訓練、大規模な避難移動の対策の必要性についても提言している。
事前の津波・シビアアクシデント対策では、津波想定の問題提起に具体的な措置を怠ったこと、また、設計上の想定を大きく上回る津波では安全機能の広範な喪失が一時に生じ、直ちにシビアアクシデントに至る可能性が高いlことが認識されていなかったこと、全電源喪失対応策や消防車による注水・海水注入策の未策定、緊急通信手段の機能不全、緊急時における機材操作要員手配が考慮されていないなど、多くの不手際を指摘している。
以上から、事故発生とその後の対応の問題の多くは、津波によるシビアアクシデント対策、複合災害という視点、全体像を見る視点、それぞれの欠如が要因と分析している。
「終わりに」には、「何かを計画、立案、実行するとき、想定なしにこれらを行うことはできない。しかし、同時に、想定以外のことがあり得ることを認識すべきである。今回の事故は、我々に対して、「想定外」の事柄にどのように対応すべきかについて重要な教訓を示している。」と記載している。
原子力の危険性を考えれば、想定外など決して許されない。まして、過去の津波の分析結果を黙殺し、想定内の対策を怠った原子力行政の責任の重大さは非常に大きい。委員会では、今後も調査・検証を進め、平成24
年夏頃に最終報告を取りまとめて公表する予定だ。取り返しのつかない原子力災害に、責任の所在の明確化が強く望まれる。それが、失敗を繰り返さないことにもつながるであろう。